公認会計士 転職から起業までのキャリア話
公認会計士の矢島雅己(50)は、外資系の会計事務所からIT(情報技術)企業のT社(当時
東京都港区)に転職し、同社を上場に導いたキャリアを持つ。
役員として新規事業開拓などに奔走するが、大病を患って退任。
子供がいない矢島は「自分のDNA(遺伝子)を会社という形で残そう」と考え、経理、会計、法務分野に特化した人材ビジネス会社を起業した。
(記者 財川典男)
- 日本大学商学部在学中に公認会計士の第二次試験に合格した矢島は、大学院に進学した。
- 商学研究科博士前期課程を修了し、1980年にプライスウォーターハウス会計事務所(現青山監査法人)に入った。
- 当時、プライスウォーターハウスは、米国流のもっとも厳格な監査で有名だった。
- 矢島は会計士補として日本を代表する重電メーカーから、数人しかいない外資系企業の連絡事務所まで、さまざまな企業規模の監査を経験した。
- 担当した業種もさまざまだった。
- 会計監査を通じて、会社の規模や業種によって、管理の仕方や手続きが大きく異なることを学んだ。
矢島雅己の転職履歴
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1980年(25歳)
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プライスウォーターハウス会計事務所 入所 |
| 83年(28歳) |
プライスウォーターハウス コンサルタントに移籍 |
| 83年(29歳) |
会計士補から公認会計士になる。 |
| 84年(30歳) |
米グアムの会計事務所に現地責任者として出向 |
| 86年(32歳) |
プライスウォーターハウス コンサルタント取締役 就任 |
| 90年(36歳) |
T社 入社 |
| 93年(38歳) |
T社 取締役 就任 |
| 95年(40歳) |
T社 取締役 退任 |
| 96年(42歳) |
ジャスネット(現ジャスネットコミュニケーションズ)設立 |
会計士になる
- 企業監査業務を四年間担当し、矢島はグループ企業のプライスウォーターハウスコンサルタントに移籍。
- この年に、公認会計士の第3次試験に合格し、晴れて公認会計士になったが、コンサルティングという仕事に疑問を抱くようになる。
- 「顧客企業と一緒に予算管理などの経営のシステムを作っても、運用するのは顧客企業。運用までかかわれないという限界を感じました」と振り返る。
- 顧客も「経営のシステムが使いにくいといった文句ばかり言う」のも悩みだった。
- 自分で最後まで責任を持つには、事業会社に転職して直接、経営にかかわらないといけないと矢島は考えた。
- 会計事務所、コンサルティング会社を通じて、10年間をプライスウォーターハウスグループで勤務した矢島は、90年末に退職した。
上場へ奮闘
- 退職翌日には、知人に紹介されていたコールセンターなどの情報サービス業、T社に経理部副部長として入社した。
- 当時のT社は、店頭公開企業。東証二部上場を目指していた。
- 上場準備のために、公認会計士の矢島に白羽の矢を立てたわけだ。
- 矢島も「1代で企業を築き上げた社長に興味があった」ので入社に躊躇はなかった。
- 「当時は、店頭公開と上場では、審査の厳しさに雲泥の差がありました」と矢島はいう。
- 例えば、準備する資料も、店頭公開でだと段ボール1箱で済んだが、上場だと11箱が必要だった。
- T社は、監査法人と幹事証券会社から上場に関して指導を受けていたが、改善すべき課題が山積していた。
- 上場延期になる寸前だった。
- 予定通り上場させるために矢島は奮闘した。まず原価計算の制度がなかったので、制度を作った。
- 予算と実績管理の制度も、決算に結びつく形になっていなかったのを改めた。
- 1年間で上場準備が完了した。
- しかし、幹事証券が不祥事を起こして営業停止に
- 結局、上場は1年遅れだが、92年10月にT社は東証二部に上場した。
- 上場を果たしたことで、矢島はT社を辞めるつもりだったが、引き止められた。
- 社長と副社長直属の戦略スタッフとして、中期経営計画、予算策定、業績管理などの業務に従事した。
- 事業企画推進本部で米国のインターネットのブラウザ(閲覧)ソフトを日本語化するなどの新規事業立ち上げでも本部長として、指揮した。
- しかし95年に矢島は拡張性心筋症という心臓病で入院。これを機に、取締役を退任した。
新会社立ち上げ
- 入院中に矢島は「今まで吸収してきたことを吐き出して人生を終えたい」という思いが強くなった。
- 矢島には子供がいなかったので、会社を起業することでその会社に矢島のDNAを残そうと思った。
- 96年に新会社、ジャスネット(現ジャスネットコミュニケーションズ)を立ち上げた。
- 職業紹介業や人材派遣業の許可を取得し、自らの経験を生かして公認会計士を企業に仲介する職業紹介業から事業を開始。
- 経理、会計、法務に特化したユニークな人材ビジネスを展開している。
- 最近はM&A(企業の買収合併)や株式公開準備のために、公認会計士が企業に所属するケースも増えてきた。
- 若手の公認会計士の仲には、監査だけの業務でなく、企業経営を目指している人材も多い。
- ニーズに合った事業だった。
- ジャスネットは、経理伝票作成レベルから、連結決算業務をこなせるハイレベルな人材まで派遣できる。
- 難病に冒された矢島は、今でも8種類以上の薬を飲みながらの生活だが、「事業を通じて社会に恩返ししたい」という思いをさらに強めている。
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