日本型戦略人事再建の考え方
NTTデータ経営研究所(東京都渋谷区)によると、ここ10年以上にわたり試行錯誤を経た「成果主義人事」は、各社で行き詰まりを見せているという。
では、その要因は何か?状況打開のポイントは?同研究所の田添氏に語っていただく。
成果主義によって生じている問題の性格
- 会社方針や施策に対して社員の不満が増大している。
- 客観性を高めるために、目標管理を導入したが、会社方針と連動しない。
- 人材が育たない。ベテラン社員から後進に対して、ノウハウが伝承されない。
- こうした問題点を見ると、何故こんなことが問題になっているのかと不思議に感じた方もいらっしゃるのではないかと思います。
- 多くの企業で社員の不満が増大しモラールが低迷している状況は、組織としての理念的結集軸の弱体化と大きな相関を持つ現象と考えられます。
- 成果主義人事や会計基準をはじめとする経営プロセスのグローバル化によって、わが国固有の経営思考はことごとく瓦解してきました。
- とはいえ、成果主義が従来型の理念に代わる新たな理想を私達にもたらしてはいないことだけは確かなのです。
- 皆さんの会社では、社員全員が依拠することのできる理念上の結集軸を、果たして提示できているでしょうか?
日本型戦略人事再建の契機とは?
成果主義人事の総括に立って、ここ10数年のいわゆる「グローバル化」の本質を整理してみましょう。そうすると、そこには大きく2つの要素が混在していることが分かります。
- 全く新しく米国から導入された原理、ルール及び方法論
例えば時価会計等の会計基準や企業統治論のようなものがそれに当たります。
これらは全く新しいスタンダードですから、もし本当に必要なら新たに学んで適応するしかありません。
- 本来、わが国に存在したが、損なわれたり忘却されていたものが、米国流にアレンジされて再びわが国に還流してきたもの
象徴的なものに、“シックスシグマ”運動があります。
これは、わが国のQCをはじめとする生産性向上運動の手法が、米国流にアレンジされたものと言えます。そして、この種のパターンは、意外に多いのです。
現在わが国の特に大手企業で導入が盛んなコンピテンシー手法は、米国では既にブームは下火となり、そのマイナス面(つまり弱点)を克服するための検討作業が学会を中心に行なわれているようです。
コンピテンシーは、定義すると「高業績者に特有の行動特性としての能力」です。
モデル化して人材評価フレームを作り人材登用を進めた結果、必ずしも登用した人材が期待に応えて活躍するとは限らないという矛盾が事例として次々に報告されるようになりました。
そうしたコンピテンシー論のウィークポイントを克服するために、例えば次のような補完的方法論が提唱されています。
- 従来、テクニカル、ヒューマンスキル(例えばコミュニケーション力等)、コンセプチュアルスキル(論理的思考力等)を中心に構成されていた能力モデルを、感情や意欲、人柄といった更に基礎的な要素も組み入れて補正する。
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高業績者の能力要素だけでなく、「挫折」の可能性など負の要因もモデル化して、アセスメントの際にはコンピテンシーと合わせて評価する。
exある一定の地位に就くと他部門や本社と激しく対立したり、部下との関係が悪くなって業務遂行に著しい障害を発生させる等)する人材に特有のマイナスの能力要素
さて、ここまで検証してみると、ある重大な事実に気づくのではないでしょうか?
「このようなことなら従来、日本の企業が当たり前の習慣として行なっていた」事実に・・・・。
特に社員の人事評価を行なう際、テクニカルな能力や業績だけでなく、「積極性」や「協調性」といった情意的要素を合わせて評価するという方法は、わが国企業では広く行なわれていました。
また組織内での親密な連携関係の中で培われた人格的な「信頼性」も、暗黙のうちに重視されてきた人材の登用要件です。
その背景には、長い時間の中で人材価値をトータルに見極めていこうとするわが国企業人事の特有のスタンスがあります。
結論を整理します
米国の理論や事例を学ぶうやり方は非常に時間とコストを要します。逆に、
| わが国固有の特性を見直す |
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↓ |
| それを現代の条件の中でアレンジする |
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↓ |
| 経験上有効な仕掛けを選択する |
するとスムーズに進めることができます。そこに、新たな日本型戦略人事再建の
契機も存在しています。
企業の潜在力を引き出すには?
体質は急には変わりませんが、長い時間の中では徐々に変化していくものです。
組織の中には必ずいくつかの変化の「胎動」が存在します。もちろん、それらはよい因子ばかりでなく、組織をより悪い方向に変える要因も含まれています。
その「よい因子」が、いわば企業の潜在力(ポテンシャル)です。
この中には、大きな財産であるにもかかわらず忘れ去られ眠ったままとなっている「資産」が非常に多いと思われます。
埋もれた資産の中から優れた変化の因子を見極めて顕在化させ、その変化の胎動を戦略の力によって加速することは、ここまで見てきた成果主義人事の経緯を踏まえるとき、とりわけ人材マネジメントにおいては重みを増していると考えられます。