メンタリング そのビジョンと情熱
現在、世界的なビジネス、とくに組織・人材戦略のスタンダードとなりつつあるのが「メンタリング」である。
指導・育成技法としてのコーチングの普及が進んでいるが、組織・人材戦略上の成果は今ひとつというケースが相次いでいる。メンタリングは、そこに“魂”を吹き込む!
そのメンタリングの第一人者として定評のある
NTTデータ経営研究所の
人事コンサルティングチームの田添氏にインタビューを行った。
“メンタリング” とは、どういうものなのですか??
- メンタリングはひとつの役割行為のモデルですが、何も特殊なモデルではなく、よく見渡すと私たちの周囲にごく日常的に存在しているモデルです。
- 社会に出てからある程度の年数が経った人なら、自分の人生を振り返ってみると、必ずどこかの時点で大きな影響を受けた人がいるのではないでしょうか。
- それは、時には先輩であったり、上司であったり、また仕事とは別の活動の中で出会った人であったりします。
- ただ大事なことは、そうした人との交流を通じて、交わした会話や共に行った活動が、自分の人生の進路を大きく左右するくらい重要な影響をもたらすことがある、ということです。
- そのときの「先輩(上司)」は実質的にはメンター(≒指導・薫陶する役割)であり、自分はメンティー(≒指導・薫陶を受ける役割)なのです。
- メンタリングは、こうした豊かな価値ある関係性を、何らかの制度的なアプローチを通じて、組織の中に積極的に創り出し、それによって社員のキャリア設計や成長にプラスの影響を与えていこうとする活動です。
なぜ今“メンタリング”が必要なのでしょうか?
- このように自分の人生に重要な影響を与えてくれる人、これは誰にとってもかけがえのない大切な存在のはずです。
- ところが、こうした出会いの契機は、少なくとも企業組織の中では近年だんだんと減少していると考えられます。
- 下記のような現象が、多くの企業で広く見られるようになっていることが、そのことの証左でもあります↓
- ベテランから若手に技能やノウハウの伝承が進まない。
- 社員の中に、会社組織や制度への不満が高まっている。
- 会社が何か新しい取組みをしようとしても、社員が白けていて積極的に動こうとしない。
- 若年層の退職者が多い。
- 部門間での対立があるため、人事交流やナレッジの共有が進まない。
- 内部での調整や根回し等に多大な労力が裂かれ、内向きの組織になっている。 等々
- 以上のような現象の背後にあるのは、企業組織がよって立つ価値観(組織バリュー)が共有されていないため、組織の求心力が失われているという事態です。
- 指導や薫陶の役割モデルを提供することによって、失われた、ないしは見失われつつある“価値”を今一度呼び起こし、深い次元での再共有化を図ろうとすること、ここにメンタリングの本質的な眼目があります。
メンタリングは、コーチングとはどう違うのですか?
- 指導・育成の技法として捉えると、メンタリングとコーチングとはほとんど同じです。
- というよりも、コーチングの技法は、メンタリングの中で積極的に活用すべきものなのです。
- ところが、近年コーチングの導入が各企業で非常に盛んですが、その指導・育成効果という点では、うまく進んでいる事例は少ないようです。
- その要因は広く捉えるとほぼひとつで、指導する側(=コーチ)と指導される側(=コーチー)が共有すべき価値観が不明瞭である、ということです。
- つまり、何のための指導・育成なのかが不明瞭な中で、育成・指導技法の活用だけが試みられているということです。
- そうするとどんなことが起こるでしょうか↓
- コーチそのものが、指導育成に対するモチベーションを持つことができない。
- そのために基本的なコミュニケーションがうまく行えない。
- また極端な場合には、コーチングでよくよく話し込んでみても、部下の側に成長の契機が見当たらない、上司の側にも伝授すべきことが何もない、ということも起こりえます。
- これに対して、メンタリングは、成長の目的(≒キャリアデザイン)や価値観・ビジョン、更には組織改革戦略の共有をも組み込んだ活動モデルです。
- 加えて、組織の状況に合わせて、周到な制度化、プログラム化を行い、活動の定着、定着による「体質化」を強力に推進します。
近日、後編をお伝えします。ご期待下さい。